【本の紹介】学級崩壊の原因はこれか?
今日は、本のご紹介です。
作家の内田樹さんは、心身の関係や時代の読み解き方で新しい考え方を教えてくれる、私がよく読む作家さんです。
今回読んだのは、この本。
「下流志向」は、副題に目を惹かれました。
≪学ばない子どもたち、働かない若者たち≫
望むか望まないかに関わらず、こういう子ども・若者が増えてきている印象を私が持っているからです。
この本の内容で特に気になるのは、
子どもに、消費者思考が根付いている
ということ。
金銭感覚が養われている、とかではありませんよ。
何事も等価交換が当たり前という感覚がベースにある
ということです。
内田さんによると、
以前であれば、小さい頃は家庭でお手伝いをして認めてもらうという手順があった。
しかし今は親に余裕がないので「時間がかかるから手伝いはしないでいい」。お小遣いを親や祖父母からもらって買い物をする経験の方が多くなる。
すると起きるのは、
商品価値を知ってから買う、等価でなければ気に入らない、なんなら値切る
こんな価値観が、子どもに刷り込まれるということ。
そうなると、学校でも
勉強する意味がわからない、と思う
↓
意味を感じないものはしない
↓
授業を受けるのは不愉快なので、不愉快な時間に対する等価交換として「不機嫌でなければならない」
ここで、なぜ子どもが不愉快と不機嫌が価値として認められると感じているかについて、こんな説を内田さんはとなえています。
「家庭で学んだから」
父親は、昔は労働の対価として獲物を持ち帰った。
現代では、給料は銀行に入り、父親は家計を維持するための労働の対価として「不機嫌」を持ち帰る。
すると、自分達も家庭に貢献していると考えている母親も、不機嫌になる。
そうでないと、父親の「貢献」に対抗できないから。
最終的には、誰が家庭に貢献しているかは、不機嫌の度合いで判断される。という価値観が、子どもに刷り込まれる。
これにより、学校で「不機嫌」を価値として出す子どもが出来上がる。
実際は本の中ではもっとえぐいことが書いてありますが、長くなるので省きます。
私も私立高校で英語講師をしていた時、「英語なんて何にも役に立たねーじゃん!」と、授業をさぼり気味の子がいました。「今、役に立たないと思っても、将来役に立つことがあるかもしれない。今若いということは、将来の可能性が多いということ。その可能性をふくらますために、今できることはしてほしい」と、その時話したのをよく覚えています。
若者が私よりも未熟とは言えないのでしょうけど、経験が浅いと見えないことはたくさんあります。「今」の自分が想像できないことは、未来にたくさん起こる。その時の可能性や対処方法を増やすのが、「今」の自分だと思います。「今」の判断で切り捨てては、未来に広がりが無くなるじゃないですか。
大学で、単位ギリギリで卒業しようとする学生がいるのも、この消費者思考で理解することができます。
「卒業」に必要な最低限の単位は決まっている。
それ以上の単位をとる=勉強の労力をかけるのは、「損」である。
私は高度成長期に生まれ育ったので、この価値観の前を知らないことになります。だから前の時代とは比べられませんが、こういう損得ばかりに目がいく人間ばかりが社会に増えるって、なんとも悲しいような気がします。
子どもを育てるって、損得でいったらどっち?
最低限の手間で子どもを育てたい!
なんていう考えでは、育児はできないですからね。
どれだけ頑張っても成長が見えにくい場合もあれば、たいして苦労した覚えもないけどすくすく育つ子もいる。
こればかりは、等価交換とか言ってられません。
でも、等価交換の価値観が強い親が出てきているのであれば…
どうなんでしょうか。
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